ホルンの修行
−−その驚くべき実態−−
Xのこの日のオカズは敬愛するハウプトマンがソロを吹いているハイティンク
指揮の録音であった。ハウプトマンの独特のフレージングをなぞりながら自分
ならどうするのか考えた。大切なソロなどはいつ何回吹いても納得できる程度
に仕上げないと必ず本番でなにかヘマをやらかすはずだ。小心者のXは先にブ
ラ2の大ソロを仕込んだとき5回連続で吹いてもバテないことを確認してから
本番に臨んだ。あがってしまわないためにも絶対に大丈夫という確信が必要な
のだ。バテてしまうようなテュッテイーではどこで3番と交代し自らを回復さ
せるか吹きながら計画を練り鉛筆で書き込みを入れた。Xはハウプトマンが
なぜあのように突然発狂してしまうのか長く疑問であったが、彼の音をなぞっ
ているうちに何となく思った。ハウプトマンは自身のソロに「手詰まり」を感
じたとき発狂したかのように演奏し聴衆を飽きさせないよう配慮している
のではないか。もしそうだとしたら・・。豪快なフレージングと裏腹に繊細で
小心者のハウプトマン。
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