アトリエハーロー体験記   その4



木村氏は、楽器の製作技術と同時に、ホルンに備わる本来の音色を作り出す 奏法に関する研究家でもあります。「製作」と「奏法」はホルンの魅力を醸し 出すための両輪と言えるでしょう。



氏が本場VPOメンバーとの接触から得たと言う奏法のエッセンスには「シュ トゥッツェン(Schtuzen)」の捉え方や「息の速度(スピード)」の理解が欠 か せません。しかし、これらは簡単に言葉で説明できず、即座にできてしまうよ う な種類のものではないため、自分で採り入れようとする者はそれまでに培った奏 法に関 する信念に邪魔されない開かれた「心」を作り出す事から始めなければな りません。 それには、ある程度自信を持ってしまっている 人でも、体験した事の無い新しい物事や、それまで信じてきたのと異なる物事 がごく当たり前に存在する事を素直に認めなければならないのです。 木村氏は「VPOのホルンメンバーは伝統を継承しているけど、決し て縛られていないところが凄い。」といいます。その奏者が培ってきたものと 全く違うアプローチを要求しても彼らは「とにかくやれてしまう」というので す。その柔軟さが本当の能力ということで、様々な世界的ディレクターの指示を 反映し数多くの舞台を こなすためには不可欠なことなのでしょう。 ある奏者が培ってきたものと全く違うアプローチを要求された時、よくありが ちな傾向は、

1. それまで築いた奏法に全く自信や興味がなくなり全てを捨ててしまうた め何も出来なくなってしまう。盲目的に新たなアプローチに臨み現状復帰 すら出来なくなってしまう。

2. 自分のことではないとして全く受け入れない。時に取り乱して抵抗し持 論 を展開する。そうでなくとも涼しい表情の下に全く受け入れないことを決めて いる。

いずれもよい方向には働きません。しかし、どうしたらいいのか…そこが分か れ道なのでしょう。




その3に戻る     その5に続く  



ホルンのページにもどる