アトリエハーロー体験記   その10


<トムベック氏のレッスン>

久しぶりに雑司が谷アトリエハーローを訪問しました。この訪問の直前に、中 根氏より、ウイーンフィル来日公演最後の日サントリーホール内楽屋の1室でト ムベック氏のレッスンを受けた時のレポートが届き、多いに興味を持っていたと ころでした。中根氏のレポートによれば、ブラームスのセレナーデ第1番を課題 にしていたとき、息を吸い終わってから音が出るまでの時間をもっと短く、とい った指摘があったようでした。これはどういったことなのか、通訳に立ち会った 木村氏に聞いてみることにしました。
トムベック氏は「緊張する場面で音を外すのを怖がるあまりリキンだ結果そう なることが多い。もし繰り返して同じ音を外すようだったら心理的な問題だか ら、テンポをゆっくりにするとか、少し音を下げて、止まることなく出られるよ うに練習するといい。」と言っていた。
何回やっても途切れず一つながりの息でうまく吹けないときは心理的な問題な ので練習に工夫していかなければと話しが進んでいきました。
木村氏は私に、「いきなりはじめたとき外してしまうパッセージでも、2回か3回 繰り返してやれば外さなくなる。そのときどうなっているのか。外さなくなった 2回目とか3回目でもって1回目からやるにはどうしたらよいか?」と問いまし た。確かに、2回か3回繰り返してやれば外さなくなっている体がそこにある。違 いは何か?。シュトゥッツェンを開放してしまっていたかどうかが違っていたの ではないか。はずさなくなった2回か3回繰り返した後のシュトゥッツェンをまず 一回目の前に復元し、その音域に適当な息の速度を与えることで、とりあえず、 1回、成功しました。しかし、もう1回は外してしまいました。成功したときにあ って、失敗したときになかったものを見つけ出さなければなりません。仮に、息 を止めて、外さず発音できても、その奏法ではソフトな開始を絶対に実現できな いのです。つまり、その先の世界には踏み込めないという制限を自ら設けてしま うことになるのです。
音階にはいる前の2つの音が出た途端「ベートーベン」の世界になっていた。 凄いと思った。(木村氏談。トムベック氏のレッスンで、中根氏の課題がベート ーベン「第9」3楽章の4番ホルンに書かれたH-dur音階パッセージ付近に入って来 たとき。)


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