アトリエハーロー体験記 その11
<シュピッツ・トーン>
「シュピッツ」とは尖がっている状態を指す意味の言葉だそうです。シュピッ
ツ・トーンは今回初めて聞いた言葉ですが、それは私が「真夏の世の夢」のノク
ターンを課題に木村氏と話をしていたときのことです。どうしてもオクターヴで
来る実音H音の跳躍がうまくいかず、跳躍後のHが外れる、あたってもカスな音
になってしまう点を話していました。
その跳躍後のHを、つやがあってよく光っていて、かつ、立っている「炊き立て
新米」のご飯つぶのように吹きたいんだと話したところ、木村氏はすぐに吹いて
しまい「以外に簡単なんだ」と語りました。そのとき私はその差をはじめてはっ
きりと感じ取ることができたと同時に、心中穏やかでないものを感じたのでし
た。
木村氏が気をつけているのは次の点でした。
①唇が上の歯ぐきとマウスピースの間でブ厚いクッションのような感じを持つこ
と。
②唇をよせて、アパチュアを小さくする感じ。
③アパチュアを小さくするときに息の流れを加速する。
マウスピースは上唇に乗っていなければならない訳で、それが上唇ならば息を取
るために口を開いてもマウスピースがぐらつかない。ラルス氏は上も下も離さず
に口の両脇の隙間からものすごい量の息を一気に取り込めるのだそうです。
すこし時間をおいて、キーになる要素を整理し、充分にシュトゥッツェンを意識
しながら、上記を取り入れて、意識の最後に残った覚悟で吹いてみたところ、暖
め直した飯のようにつぶれて艶がなくなっていた跳躍後のHの立ち方が少しくっ
きり変わった感じを得ました。
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その12に続く
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