アトリエハーロー体験記   その8



< 感動的なフォルテッシモサウンドを目指して>

ウインナホルン最大の魅力の一つは、あの凄まじく割れたフォルッテッシモサウ ンドではないでしょうか。ブルックナーやR.シュトラウスの作品は、ホルンに このサウンドがあることを前提として書かれているような気さえします。ウイー ンフィルに聞くことのできる感涙を呼ぶホルンのフォルッテッシモサウンドを習 得するには…?このテーマについてメールでなされた筆者(A)と木村氏(K)の Q&Aを整理してみました。

A.ウインナホルン最大の魅力の一つは、あの割れたフォルッテッシモサウンド だと思うのですが、どうもただ単にウルサイだけの音色との違いを明らかにする ことが困難な現状があると思うのですが…?。

K.大きな音は大きなエネルギーを投入した結果に出るのですが、まずそれを妨 げて居る自分を見付けて、「如何に息は出したが力は抜いたか」を発見してくだ さい。
息の量を多くする為に力を使った時に出る無神経な音質は弦楽器の人からは嫌わ れるのです。クレッシェンドしながら唇の閉じ合わせを強めていくと音の良い大 きな印象のする音質になります。

A.「唇の閉じ合わせを強めていく」というのは、どのようにとらえればよいの でしょう?。

K.さて、大きな音には唇を閉じると効果的の話は田町ではそこ迄話が到達しな かった様ですね。まず体の方の動きとしては、それぞれの音が明瞭に出るために 必要な息のスピードを作る必要があり、高い音域ではかなりのスピードが必要で すが、それを力任せに押し出そうとするとリキミの入った音になります。スピー ドオーバーには注意しながら単純に必要とされたスピードを出せるとベストな訳 です。次に、唇の閉じ合わせを強めていき、大きな音を印象のよい音質に持って いくテクニツクですが、小さなエクササイズを考えるとすると、4拍で小さなク レッシェンドをする、まず初めに唇だけを4拍目に向けてより強く閉じてみる。 次は、息の分量を増やしてクレッシェンドする。次は息の圧力を高くして同じ事 をして見る。単純には少し多過ぎる息を取って支えを強くしてしまう。と言う順 です。

A.「閉じる」と息が出る穴も塞ぐことになってしまうような気がしますが?。

K.別の表現をとるとすれば、「唇の上下をより強く合わせる」のです。閉じる という理解は確かに誤解をしやすい。巧くやろうとするよりは、そう言う操作の やり方が有り得るのだと感じられればまずは良いのだと思います。唇を上下に強 く閉じようとした時に腹筋が 反応するのが感じられていますか。更に腹筋のヘソの上と下の位置が意識出来て いますか。
ヘソの上の腹筋を意識して腹筋を働かせると信じられない程に閉じが効きます。 閉じるパワーは腹筋から出て来る、というのがギュンター・ヘグナーの指導で す。

A.エクササイズをしながら思ったのですが、自由で時間の長いクレッシェンド のなかでフォルテ的音域までいけばバリッとした音色への変化を体験できるので すが、小さな、しかも4拍と決められたなかでは、皮が破れないかのようにバリ ッとした音色への変化をさせるのが大変困難と思ったのです。

K.クレッシェンドのエクササイズはmfからffがその適切なゾーンだと思い ますが、息の支えが感覚から途切れるとただ喧しい音に成ってしまい、支えが効 いて居る時はバリッーンと鳴るゾーンとまだ割れて居ないゾーンとの間を行き来 するコントロールが可能に成るのです。バリッと割れる直前のボリュームをしっ かりと管理出来て、少しだけ息を増やせば、あのバシッと来る音になり、少しだ け控えると大きな音の割には柔らかくできる。ローラント・ベルガーさんのアレ ですよね。

A.「息の支え」をしっかり意識していられる間は大丈夫という理解でしょうか。

K.支えが効く範囲がフォルテの限界だと考えて良いのだと思うのです。支えの 感じられる限界を更に超えて更に多くの息を出せるものなのですが、それは個人 の体力の限界であり良い響きの大きな音とは種類が違うのです。支え、シュトゥ ッツェンとは臍の上部の腹筋を働かせる事を言って居る訳ですが、際限無く力を 込めればよいと言う話では無く、力を入れる部分の意識が取れて居る範囲での話 ですから注意してください。更に今までの話で出て居ないのですが、臍の上部の 腹筋を意識して、そこからパワーを貰うのだと言って居ますが、曲の途中でもそ の力を抜くという事もしないと働かなく成ってしまいます。要するにその部分に 意識を取れるか、なのですから力を入れたらこんどは何処かのチャンスを見てフ ーッと脱力させたりしないと、支えの力を追加して行くだけに成りとても苦しい 事に成ってしまいます。腹筋は筋肉痛を起こし難い程にパワフルな筋肉と言われ て居ますが、たまに脱力する感覚を採り入れるのも大事です。話は戻って、支え の限界が出して良い大きな音の限界なのです。支えがあると言う事は、ピッチ感 が取れて居ると言う事なのですからギヤーギャーと騒ぎ立てる様な表現には成ら ないと言う話に成るのです。この前提の元で初めて唇を上下により強く合わせ る、を組み合わせると嫌われない大きな響きに成るのです。

A.ナルホド、急所が見えたように思います。

K.エクササイズについて、分り難いものでしたら違うパターンに改良して見て ください。練習の工夫は上手な人に共通する特技です。音楽の面、その為の楽器 判断の面、体作りの面に渡る理解が揃うには並大抵な努力では足りないのがウィ ンナホルンなのですから、だからこそ面白いのですヨ。一度ギュンターさんと話 した事があるのですが、ベートーベンの5番でフォルテに成ったら後は感情が昂 ぶってしまってフォルテのまま突き進んでしまったと話したら、その気持ちは理 解するが音楽はオーケストラは一人でやって居るのでは無いからその辺を良く考 えなさいと言われてしまいました。ウィンナホルンもやはりそう言うホルンなの だと思うのです。






その7に戻る   その9に続く  



ホルンのページにもどる